今年のお仕事

■ 石屋さんの焼芋

mitsuimo

 

岡山は井原産の「お芋」のブランディングに携わっています。
上手に焼けば糖度が40度(通常のサツマイモはMAX20度)にもなる甘いお芋。これを如何に売って行くか、が課せられたミッション、題して“Mission Imo Possible”。

お芋の名前は「早雲蜜芋」と名付けました。
井原はあの戦国武将、北条早雲の生誕地。その史実と芋の無骨な姿を重ね合わせたネーミングです。

コンセプトは「Japanese Sweets」。
この甘さは立派なお菓子、しかも無添加、安心・安全。特にお子さんを持つ若いおかあさん達にこの芋の可能性というかSomethingを感じてもらいたい。だからちょっと可愛らしいロゴマークにしました。芋を始めとする土着的農産物の表現にありがちな筆文字表現は今回は無しです。かと言って銀座・三越の地下で展開している焼芋屋さんのように都会的でシャープな表現でも無い。言わば「家庭のおやつ」という生活臭もする落とし処を探りました。

ロゴマークとパッケージデザインは出来上がりました。
が、この案件は「出来ました! 渡しました、はい、おしまい」と行くような生易しいモノではありません。なにしろ堅い石を扱う石材屋さんが新規に取り組む焼芋販売という柔らかい事業。作り方も売り方も全く異なる業態です。「これがほんまの石焼芋や~」とシャレてる場合ではありません。何としても結果を出さなくてはならないヘビーな案件。

結果=売り上げが立たなかったら「デザインが悪い」と他の要因をさておいて非難されるのは常。その悔しさをバネにしてここ数年間ある組織作りを画策して来ました。思い切って言うなら「数字を確約するプロジェクトチーム」です。

結果を出す為には、何を売るか=モノの価値を際立たせる、如何に見せるか=固有の価値を可視化する、何処で売るか=流通を押さえる、如何に売るか=Web Marketingを取り入れる、等々の戦術が必要になってきます。

そこで各方面のプロを招聘した“早雲蜜芋プロジェクトチーム”を結成したのです。

プロジェクトリーダーは不肖私が務めさせて頂きました。
目的の共有化、スケジュール&進捗管理、そして各人がのびのびと仕事を遂行できる場と空気感作りが主な仕事。グラフィック&パッケージデザインと各種印刷・SPツール制作とプロモーション(売り込み)も担当しました。東京での活動を通じて出来た食品流通、マスコミのコネクションが活かせます。

モノの価値を高めるためにフードコーディネーターに美味しい食べ方やスイーツへの活用法などを研究して頂きました。
結果、焼芋が一番美味しいというシンプルな結論に至り今後の販売路線が明確になりました。
企画会議では話がノリノリになってアイデアが先走りがちになるのですが軸がぶれないようコントロールする必要があります。そうすれば資本を何処に集中投資できるかが見えて来るので効果が出やすい。

売り先を確保するために岡山県内と関東圏の高級スーパーのバイヤーとの折衝も行いました。
過去数多くの特産品開発に携わってきたのですが作り手は「ウチのは手作りじゃけえ食べてみりゃ違いが判る!」と自信満々です。それでは食べて頂きましょう。何処で? どうやって?  ここのケアが出来ない“先生”が作りっぱなしにした産物の如何に多い事か。
何処の産品も同じ顔。先生方の“総論=地域産品はこんなもの”で作ってしまったモノ達が不憫です。場所が違えば抱えている事情も作物の特徴も違うのに…。地元の人は言います。「先生がメチャクチャにして帰っていった…」と。スタルクが浅草に置いて帰った“黄金のウンコ”を思い出してしまいました。

関わった限り“売る”ところまでケアしないとだめです。生産者が一番欲しているのは流通のコネクションだったりしますのでバイヤーとの生産者の間で電卓を持って交渉するのも我々も仕事。

Web Marketについては敏腕コミニュケーションディレクターの力を借りて今風にTwitterを活用した口コミマーケティングを試みています。
サイトのイメージも他の芋販売サイトとは異なる高品位且つ読み物として成り立つほどのクゥオリティーを与えました。もちろんSEO対策も万全。クライアントが自分で更新できるシステムで新しい情報を常にアップ、検索エンジンとの最適化を計っています。

http://www.soun-farm.jp/

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その他、印刷物制作の段取り。ここは素人さんが手を出し難い世界。印刷の知識は業者にナメられないための盾となり、その効果は如実に単価に現れます。
売価と梱包費を天秤に掛け色数やロットを調整。相見積りで最安値の業者を選択。そして〆の値段交渉etc。誰かが嫌われ者にならないと進まない事もあります。

そして情報操作としてプレス発表の段取り(コネのある記者に念押しの電話攻撃)、広報を兼ねたイベントの手伝い…
このチームの凄いところは自らが売り子になるところです。強制はしていないのですが、黙々と芋を焼いている者、試食を配る者、Twitterでつぶやく者etc … 素敵な光景です。

何より、特筆すべきは予算取りまで出来てしまう事でしょう。
世の中には色んな補助金や助成金制度があります。しかし多くの、本当に手助けが必要な人にはその存在すら知られていないのが実態。このチームには事業に最適な補助制度を見つけ、計画書類を作り、申請まで請け負う人材がいます。決して潤沢な資金調達とまでは行きませんが最低限効果の上がる方策を実行出来るだけの糧となり得ます。クライアントに於いては初期投資が少なくて済む事の有り難さ…正直、一番有り難がられる部分です。

資金調達・制作・運営と三拍子揃ったドリームチームがようやく出来上がりました。
各分野でのプロが集まって本気で取り組んだらこんな素敵な事が出来る…小さいながら産業の芽を生み出せたという事実。そして大きく育て果実(売上)を収穫するまで面倒を見るという自覚、というかプロとしての意地。

クールなグラフィック、素敵なパッケージやWeb Siteは出来て当たり前の時代です。それをどのように使ってクライアントの期待する答えを出して行くか、その手腕が問われます。

果たして“デザイナー”という呼称が適当なのか否か…この頃自分をどう称していいのか判らなくなっています。プロデューサー? コンサルタント? 何か胡散臭い響きがあってピンと来ません(自分が過去に受けた仕打ちからの偏見かも知れませんが)。他の良い呼び名を募集中です。

ともあれ、結果を出すための方策全てをワンストップで請け負う事の出来るチームを作る事が出来た事が、2010年 御来屋デザイン事務所最大の成果でした。

次回は「土建屋さんのワイン作り」をレポートします。