月別アーカイブ: 2014年8月

ネタ探しの旅先で見つけたモノ、気づいたコト。

 

デザインという仕事をやっていると、ある日突然“ネタ切れ”という事態がやってくる。

自己表現としてのアートなら、発想が貧弱になったとしても己が困るだけで他者には何ら不都合はあるまい。しかし、他者代弁が主な業であるデザイナーは、表現のネタが切れる=代弁する言葉(絵面)が思いつかない=おまんまの食い上げとなる。これは辛い。
しかるにその言語翻訳能力を維持強化するために日々努力を怠らない。これも仕事の内。

 

そうだ、旅に出よう!

 

例えば、東に旨いパンケーキ店が出来たと聞くや1時間の行列に並び、西に素敵なリゾートホテルが出来たと聞けば大枚叩いてそのおもてなしを体験する。

 

打合せ時、クライアントからはどんな球が投げられてくるか分からない。「ブルガリリゾートのサンカール、あの長机のような感じで」というカーブを「イタリアの大家族食堂、例えばゴッドファーザーの食事風景みたいに?」と打ち返す事が出来れば「こいつ、やるな!」と興味を持って頂ける。

仕事の始まりはいつも一球入魂。経験値がモノを言う。行った事が無い、見た事が無い、喰った事が無いはデザイナーとして即ち負けを意味する。

 

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興味の赴くがままミーハー的に巡っているのでこれぞ!というモノに出くわす確率は極めて低いのであるが、それはそれで“こういったターゲットもあるのか”という経験になるので良しとしよう。

 

例えば“日本のリゾート”を謳った高級旅館。一泊4万以上、でも連日満室。予約が取れない宿として名を馳せている、らしい。

 

部屋にはテレビも時計も無し。「非日常の空間を時を忘れて楽しんで頂きたい」というコンセプト、らしい。

 

で、行ってみた。確かに面白い切り口。が、すぐ飽きた。

 

私には「君たち庶民はこんなエッジの効いたコンセプトにグッとくるんでしょ」と思えてしまった。非日常感ってものは強要するものでは無い。

 

 

例えばバリ島のリゾートを日本で再現、という事で玄関にはバリの割門、庭には石像、家具はラタン。

 

「バリってこんなカンジだよ〜」的な浅くあざといやり方が寂しい。

 

 

しかし、商売面から見るとその方針はあながち間違ってはいないのだ。

 

日本国内のトップセレブを相手にしていたのでは成り立たない。彼らは海外のリゾート地に行ってしまうもんね。日本国内で層の厚い中流の上あたり(あるいはアジアの俄金持ち)を狙うのは大正解。

 

余談になるがイオンモールの成功の裏にはこんなコンセプトがある。

トップエンドもローエンドも狙わない。家族団らんを大切にし、そんなに上昇志向も無く、一日のんびり過ごせればいいや的一般中流家庭をメインターゲットにしているんだそうな。ターゲットが明確&メッセージが分かりやすい=来て欲しい人に届いているという事なのでこれはこれでご立派である。

 

要は経営陣が各マーケットのトップレベルを知った上で、需要に合わせたデチューンを行っていればOK。

しかし、本物を知らずして“こんなもんでしょ”という概念でやられると高みを目指している者としては大迷惑。

 

「本物はこうだ!」という気概を見せてやるのが大人!だがオトナが生き辛い世の中であるのも確か。ともあれ自分に恥じない仕事をしたいものだ。

 

 

話は戻って…

 

日本の宿のお薦めはと問われれば、私は京都の俵屋を推す。

建物、調度品全てに語るにふさわしい謂れと歴史がある。しかし300年の歴史を誇示してはいないしトム・クルーズが泊まった事もS.ジョブズが定宿にしていた事もウリにしてはいない。

料理も派手さは無いが真っ当に考えて作られた献立。付かず離れず過不足の無いサービス。

 

客に緊張を強いない、これが老舗の懐の深さ。

 

 

 

有名リゾートに満足しきれないそこの御仁、一度ご逗留されてはいかがかな。

 

時計もテレビもあります由。