月別アーカイブ: 2013年6月

6次産業化を考える Part2

■ 6次産業って、何?

1*2*3=6

1次産業に従事している方々に加工(第2次産業)、販売(第3次産業)までを指南する支援が農水省が進める6次産業化です。1 × 2 × 3 = 6という訳ですね。

味作りからデザイン、販路開拓、経営指導、資金調達などいろんな支援プログラムがありますが、一番難しいのが第3次産業。ざっくり言ってしまえばサービス業です。

これは数回のアドバイスで身に付くものではありません。商いをしている多くの人が長きに渡って苦心砕身している部分です。商売のセンス、と言っても良いでしょう。お金で解決できる問題でもありません。

例えは悪いですが、腹を空かしている人にパンを与える、これが“資金援助”に相当します。
もう一歩先を考え、小麦の育て方とパンの焼き方を教えるのが本当の支援だと考えます。つまり自立存続の術を伝授する事。
小さい事業者ですから資本も人的財産も不足しています。そこを手当するのですから支援プランナーも片手間という訳には行きません。
関わるからには一蓮托生、運命共同体。ゆえにクライアントの本気度とプランナーの力量&覚悟が大きく問われることになります。

 

■ 小豆(あずき)を使った商品と言えば?

多くの方がようかん、ぜんざい、○○饅頭の類いを思い浮かべるでしょう。それだけ市民権を得た商品と言えますが、ゆえに盲目的に企画を進めるプランナー、デザイナー、クライアントがいます。
しかし彼らに問いたい。「あなたがようかんを最後に食べたのはいつですか?」

使用シーンが思い浮かばない、それは自分の実体験から出て来た企画では無いからです。概念上の産物はリアリティーが無い。しかも年3%ずつ目減りしている市場に敢えて参入すべきなのか。
統計命、とは申しませんが最低限のリサーチは必要です。
「いや、贈答用として開発したんだ」と言うかも知れませんが、カタチとしての贈り物なら“とらや”の羊羹を選ぶでしょう。しかも“夜の梅”より高価にもかかわらず完成度の低い表現なら言わずもがな、です。

「若い人達に受けるデザインをして欲しい」とも良く言われます。
しかし若い彼&彼女達はお金がありません。商売仇はもはや他の菓子では無く通信機器(モノならまだしも電波という目に見えないもの)ですので田舎の菓子屋一軒でどうなるものではありません。
でも若者受けを狙ってキャラクターを使った商品が溢れるのです(くまもんは別格w)。
瞬間最大風速で喜んでいるクライアントにも責任があります。 一時流行った萌えキャラ商品の末路はどうなりましたか? あなたの作る商品はキャラクターに頼らねばならない程薄っぺらい中身なんですか?

我々地方に暮らす“愛すべき田舎者”は大手プロダクションの戦略が正義では無いことを自覚し覚醒せねばなりません。
何度も申し上げますが、中小零細企業は大手が真似できない“小回りの利く”戦い方(局地戦、ゲリラ戦とも言います)があるのですから。
企画・デザインは勘や概念で行うものではなく、緻密な戦略と戦術を持って行う商業活動です。事業計画、売り上げ目標無くして企画の成否を検証できるのか、という疑問も抱いています。

何だかダメ出しばかりになってしました(苦笑)。ポジティヴな話題に切り替えましょう。

 

■ 相性の良いデザイナーに出会う方法

あなたが抱えている問題を解決してくれる相性ピッタリのデザイナーに出会うにはどのようにしたら良いのでしょうか。
先日、日経デザインの編集長とお話させて頂く事があり、その際に出た話題です。コツは二つ。
まずはウェブサイトで検索し実績で判断する、評判を聞いて回る、という真っ当なやり方。
デザイナーは専門分野があります。マルチに活躍しているように見える人でも一つの得意分野を切り口にして広げています。
グラフィック、パッケージ、ウェブ、プロダクト、ファッションetc  あなたにぴったりの“問題解決人”を見つけてください。

そしてもうひとつのコツは“先生”と呼ばれる人には依頼しない(一同大爆笑)。
理由は、クライアントはデザイナーを先生と呼ぶ事で自ら壁を作ってしまう事になる=聞きたい事も聞けない雰囲気に。
そして、先生と呼ばれる事で“その気”になってしまう輩がいるという事だそうです。「私の言う事が聞けんのか!」とクライアントを恫喝する勘違い野郎もいたとか。
アート(自己表現)とデザイン(他者代弁)を混同しているデザイナーも依然多く居ますので見極めが肝要です。

私? 自分を顧みて“先生”に成り下がらないよう、野山を駆けずり回る現場主義を貫きたいと思っています。
駆け出しの頃は絵の具で汚れた手が自慢でした。Macが入って来てからはクールに仕事をこなすのがオシャレでした。

今、旬の野菜や魚の名前がスラッと出てくるのが最高にカッコいい、と感じています。

 

続く。

 

6次産業化を考える Part1

■ 古巣に戻って来たものの…

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「本多君、いくつになった?」「今年で50ですけど…」「そろそろ地元に恩返しせんといけん歳じゃなあ」「恩返し、ですか〜」

岡山が輩出したプロダクトデザイナー、水戸岡さん(九州JRの列車と駅舎&グラフィック、岡山の市電MOMOのデザインが有名)と雑談していた時に言われた言葉です。その時はピンと来ていなかったのですが、以来心の片隅に師の言葉がずっと引っかかっていました。

時を同じくして大手グロッサリーチェーン店から地方の産品企画のお話を頂く事があり、慣れ親しんだ岡山の物産の事なら、と軸足は次第に故郷へ。

土に触れながら生産者の方々とモノ作りをする機会を得ました。そして「おかげさんでよう売れた」と嬉しい声も頂きました。NB商品のデザインワークでは経験した事の無い充実した気持ち…

これが恩返し? いや、逆に楽しませて頂いているこの頃ではあります。

1980年代、大分県の地域産品復興の一環で“一村一品運動”というものがありました。その流れは全国的なものとなり当然岡山にもやって参ります。

当時、地域産品に関して多くの知識を持ち合わせていなかった私は、大分県・由布院を手本にすべく足繁く通い地域産品の在り方を学びました。
飾らず、饒舌になり過ぎずに価値ある情報のみをしっかり伝えるといったミニマムな表現の中に地域デザインの本質を見ました。

「デザインとは中身と外見の関係性を表現する事」と仰ったのはCIの祖、P・ランドー氏だったでしょうか。彼の言葉が腑に落ちた瞬間でもありました。

今となって思うに、私のデザイン観にはこの頃の体験が大きく関与しているように感じます。

この地域産品開発の動き、国からかなりの額の助成金が出ていたようで、年度末になると「何でもええからシール10万円分作って」というオーダーが。
予算を使い切らないと次年度削られるから、といった理由のようでした。

このようなデザインをバカにした仕事に辟易し、二度とこんな事業に関わるもんかっ!と憤怒極まり、体調を崩し… 以来、この世界から遠ざかっていました。

時は流れて20余年。再び、請われるがまま、性懲りもなくこの世界を覗いてみると…
当時と何も変わっていないじゃないか、何やっとるんだ、という情けない思いで一杯です。商品やデザインの完成度の低さに腹立たしくもあり。

確かに表面上は巧みにキレイ&格好良くなってはいますが味が追いついていなかったり、またはその逆で独特な風味のものをわざわざ大手メーカー品っぽく(均質という意味で)アレンジしていたり…
中身との関係性が希薄かつデザイン本来の機能を発揮していないのです。

“デザインとは「どう見えるか(how it looks)」ではなく、「どう機能するか(how it works)」の問題である” 、スティーブ・ジョブズ氏の諌言が身に染みます。

 

■ 甘えの構図

何故、このような事が漫然と行われているのでしょう。

ある県の6次産業化支援プランナーの集まりに招聘されてその原因らしきものが見えてきました。集まった面子を見てみると、仕事にあぶれた東京のデザイナー、微小な仕事を拾わざるを得なくなった大手プロダクション&印刷会社、かつての栄光にすがりついている小遣い稼ぎの先生、助成金目当てのコンサルタントetc

“バリバリの現役”が見当たらないのです(現役が参加しない理由を探る必要もあるかと思いますが)。

 

国から降りる予算を仲間内で分配している馴れ合いの構図、これでは良い結果が出るはずもありません。
“地域産品だからこんな味で”とか“田舎っぽいデザインで”という妄信、とでも言いましょうか“地域産品だからこの程度で勘弁してよ”という“甘え”が見え隠れします。
そして世に溢れる漬け物、味噌、ジャムの類い…ある百貨店のバイヤー曰く「もうこんなに漬け物いらんでしょ(苦笑)」。

地域産品と言えども一旦市場に出たら大手メーカー品と戦わねばならない厳然たる現実があるにも関わらず、概念だけで、あるいはウェブサイトで検索した情報だけで組み立てたであろう薄っぺらい商品の何と多いことか。

反って地元岡山県の6次産業化支援が着実に成果を残している理由…
一言「素材が素晴らしい」。後付け作り話ではない“ノンフィクションドラマ”がそこにあります。現場の真意を汲んで素直に表現さえすれば素晴らしいモノが出来上がるのです。

もうひとつは“任命権者(コーディネーター)のセンス”に因るところが大きいと感じています。
適材適所の配置が上手、とでも言えるでしょうか、以前のようにパッケージデザインをプロダクト系の先生に依頼してしまうということも少なくなっているようです。戦略家(コンサルタント)が戦術家、すなわち表現のプロの協力を得たのも大きな要因だと思います。

結果を出せなかったら次は無い(デザインの世界では当たり前の事ですが)、という緊張感のもと、縦割りの枠を超えた動きが出来ているのも岡山県の特徴と言えるでしょう。

ともあれ始まったばかりの6次産業化支援事業、模索は続きます。地域産品の命は“多様性”です。極小ロット多品種に対応する生産コスト&流通の諸問題を解決するのが今後の課題でしょう。

 

続く。